授業の目的・到達目標
・コミュニティと地域社会の観点から自他の社会を多元的に捉えるための専門的な知識を習得できる。
・コミュニティと社会の関わりに関する専門的な知識を体系的に理解し、実社会と結びつけながら自らの問いを立てることができる。
・自分で立てた問いをコミュニティに関する専門的な知識にもとづいて分析・考察できる。
授業の概要
コミュニティのあり方には、ゲマインシャフト(血縁的、地縁的など)とゲゼルシャフト(近代的、利益的など)があるとされてきた。しかし近年、この二つのコミュニティ形態以上に、様々な形でコミュニティが多様化し、その変容と再生が社会的課題となっている。コミュニティの再生といった場合、ある地域に存在する帰属社会がその地域とどのように関わるかを再提示することになる。しかし、「モノ」の文化の時代と呼ばれる現在、「個人」の価値判断基準が「モノ」に依存する部分が大きくなり、周りに対する考え方、関わり方の変化が顕著になっている。つまり、現代社会では人と人の関係、つながりが希薄になったがゆえに、集団としての機能が曖昧になったなかで、集まって住む意義、目的を失っている集団もあると考えられる。それに加えて、近年に見られる少子化と高齢化の影響でも地域社会が崩壊しつつある。都市部や農村部を問わず、地域社会とは独立した人間集団ではなく、他の地域社会と相互扶助の関係をもち、バランスを取りながら存在してきたと考えられる。地域社会を構成する人間集団であるコミュニティは有機的に変動するが、常に集まる目的意識をもって構築され、変容されるものであると考えられる。
本講義では、コミュニティの変容と再生を対象に、コミュニティの定義とその変容に関連する概念を整理し、コミュニティ再生の背景と社会的要因を把握した上で、具体的なコミュニティ再生の事例に地域社会の課題とあり方を学ぶ。
授業スケジュール
第1回 イントロダクション(ガイダンスとキーワードの説明)
第2回 地域社会・コミュニティの概念と定義
第3回 コミュニティの歴史と形成
第4回 現代社会の変容と多様化(ローカルからグローバル化する地域社会)
第5回 コミュニティの存続・再生と課題(対策と取り組み)
第6回 都市コミュニティの事例1(学校のリノベーションと地域再生)
第7回 都市コミュニティの事例2(町家・長屋のリノベーションと地域再生)
第8回 都市コミュニティの事例3(団地・集合住宅のリノベーションと地域再生)
第9回 農村コミュニティの事例1(過疎化と地域再生)
第10回 農村コミュニティの事例2(学校統廃合と地域再生)
第11回 世界のコミュニティの事例1(中国のアフリカ人コミュニティ形成と課題)
第12回 世界のコミュニティの事例2(国際移住と地域社会)
第13回 世界のコミュニティの事例3(エスニック・宗教・言語コミュニティの形成と課題)
第14回 学習内容の確認と場合によって発表
第15回 授業の振り返り(コミュニティと社会のあり方の総括と討論)